糖質制限食と摂取エネルギーそして糖質量
糖質制限食を続けていく場合、具体的にどのくらいのエネルギー量(カロリー)と炭水化物を(糖質+食物繊維)摂ればいいのかを考えてみたいと思います。
摂取エネルギーについては、糖尿病患者を前提とした日本糖尿病学会の考え方と、基礎代謝量に基づく厚生労働省の日本人の食事摂取基準では違いがあります。
今回は糖尿病患者を前提とした日本糖尿病学会の考えで検討していきます。
一日の炭水化物の摂取量については日本糖尿病学会の「炭水化物は指示エネルギー量の40%以上60%を超えない範囲」と、糖質制限食の考え方「一日の糖質の摂取量は130g以下とする」とこちらも比較しながら検討していきます。
まず摂取エネルギーについてです。
食事療法 – 日本糖尿病学会
④摂取エネルギーの決定
●血糖値、血圧、血清脂質値、身長、体重、年齢、合併症の有無、エネルギー消費(身体活動)量や従来の食事摂取量などを考慮して、医師が摂取エネルギー量を決定する。肥満者や高齢者では低い方に設定するなど、症例ごとの病態も考慮する。
摂取エネルギー算定の目安
摂取エネルギー量=標準体重×身体活動量
標準体重=[身長(m)]²×22
身体活動量(kcol/kg標準体重)
=25~30 軽い労働(デスクワークが多い職業など)
30~35 普通の労働(立ち仕事が多い仕事など)
35~ 重い労働(力仕事が多い仕事など)
⑤三大栄養素の配分
●炭水化物は1 日の摂取エネルギー量の40 〜60% としましょう。
1日のエネルギーが 2,000kcal の場合、60%の1, 200kcal を炭水化物で取
ることになります。炭水化物は 1g 当たり4kcal ですので、1, 200kcal ÷4 =
300g、1 日の炭水化物の摂取量の目安は300g となります。
たんぱく質は標準体重1kgあたり1.0~1.2g、残りを脂質で摂取する。
●飽和脂肪酸と多価脂肪酸は、それぞれ、摂取エネルギー量の7%、10%以内におさめる。
一日の摂取カロリーを計算します
上の計算式にあてはめて計算していきます。
身長170cmで普通の労働(30kcol/g)の場合
標準体重は
1.7×1.7×22=63.58kgとなります
摂取エネルギーは
63.58×30=1,907.4kcolとなります
40%以上60%を超えない範囲とありますのでここでは60%とします。
1,907.4×0.6=1,144.44kcol
一日の炭水化物の摂取カロリーは1,144.44kcolとなりました
あくまでも炭水化物のカロリーなので正しい糖質量の計算はできませんが、仮に100%糖質だとすると、糖質は1gあたり4kcolの熱量をもっていますので
1,144.44kcolを4で割ります。
1,144.44kcol÷4=286.11
一日の糖質摂取量は286.11gとなりました。
一日三食として平均一食あたりの糖質量は95.37g
●日本糖尿病学会推奨の食事療法
Ⅱ型糖尿病患者(体重64kgの場合糖質1gで血糖値が約3mg/dl上がります)インスリン及び薬の服用なしで空腹時血糖値が110mg/dlの場合
食後血糖値は
110+95.37×3=396.11mg/dlと予想されます。
●糖質制限食
糖質制限食の考え方「一日の糖質の摂取量は130g以下とする」
○一食あたり糖質40gの食事をした場合
Ⅱ型糖尿病患者(体重64kgの場合糖質1gで血糖値が約3mg/dlあがります)インスリン及び薬の服用なしで空腹時血糖値が110mg/dlの場合食後血糖値は
110+40×3=230mg/dlと予想されます。
○江部康二医師が推奨するスーパー糖質制限食の場合一食20g以下ですので
食後血糖値は
110+20×3=170mg/dlと予想されます。
○糖質制限食の場合、一日の総カロリー1,907.4kcolに対する糖質のエネルギー割合
糖質130gの場合27.26%
糖質60gの場合12.58%
以上「食品交換表」に基づくカロリー制限食と糖質制限食について検討してきました。
〇カロリー制限食の場合
いかに食後高血糖をもたらし、また血管内被に傷害を与えているかお分かりいただけましたでしょうか。
糖質を多量に摂取し、食後のグルコーススパイクを薬で抑えたり、インスリン分泌促進薬により疲弊した膵臓のβ細胞を刺激することを毎日繰り返していれば悪循環となります。
〇糖質制限の場合
食後血糖値の上昇が最小限ですみます。
メタボやダイエット、血糖値の改善と目的は様々だと思います。
糖質制限は、基本的な知識を持ち、そして自分に合った方法で長く続けるのが一番だと思います。
くれぐれも無理をしたり、カロリー不足にならぬよう気を付けてください。
あくまでも糖質制限は自己責任で実践してください。
また糖尿病治療中でSU薬の服用や、インスリン注射を打っている場合は、低血糖の恐れがありますので、必ず医師の指導の下に実践してください。
参考にさせていただいたサイト
食事療法 – 日本糖尿病学会
https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/kenkoshoku_startbook/kenkoshoku_startbook.pdf
厚生労働省の日本人の食事摂取基準 7ページをご覧ください
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf